かつて、世界は魔王の支配にあった。
魔王はその魔の力を用い、ある時は人々を殺し、ある時は人々をいたぶり、その力を持て余していた。
人々はその強大な力の前に及ばず、魔王に恐怖し、怯えながら生活をしていた。
しかし、そんな暗黒の時代より100年、世界に転機が訪れる。
ある三人の剣士と一人の神官が魔王に反旗を翻したのだ。後に「ハルハルトと聖三騎士」と呼ばれる勇者達である。
一人はすべてを断つ剣を、一人はすべてを還す剣を、一人はすべてを癒す剣を、そして一人は天より授かりし力を持つ杖を操り、魔王に挑んだ。
その戦いは激しく、あらゆる大地は汚れ、海は腐り果て、多くの人々は死に絶えた。
しかし、その激戦の末、四人の力もあって魔王を討ち、勝利を収めることができたのである。
生き残った人々は天の力により守られし大地に集い、新たに国を作った。
魔が祓われ訪れた幸せと悦びを忘れないように、永遠の安寧を願い、その国の名は古代語で楽園を表す「ユートピア」と名付けられた。
そして、数百年の月日が流れたその国では、異能の能力を持った能力者の存在があった。
彼らの力は、魔王の産み落としたそれなのか、あるいは聖三騎士たちのような聖なる力なのか、今となっては誰にもわからない。
能力者は次第に、その力故にその存在を疎まれるようになっていた。
しかし、セントラルシティのある新聞社は、あえて能力者が行った悪行ばかりを取り扱い、「彼らが何故そのような悪事に走ったのか」、「彼らは何故力に溺れてしまったのか」を徹底的に晒しあげた。
「能力者を恐れるな。彼らは悪魔ではなく、あくまで人間だ。」、「薬も過ぎれば毒となる」。
その新聞は、ホーリーホリック(聖中毒)と銘打たれている。